新宿三丁目・味彩吉野|陳健一直伝の四川風麻婆豆腐。靖国通りの小道にある目立たぬ小料理屋

ものすごくお金を落としたいお店がある。
今時お金を落とすとか言うと嫌な日本語だねなんて言われそうですが、馴染みの店に通いつめるくたびれたおっさんが言う、“昔から真面目に通ってお金落としてんだからいいじゃないの"なんて言うくだらない理屈には深々と込められたロマンというものがあるのだ。
まるで私が言うとただの言いたがりでしかないけども、本当にお金を落としたいお店を見つけてしまったんだから仕方ない。

新宿三丁目と二丁目の間、新宿五丁目東交差点少し先、靖国通りから小道へ入る。
時刻は20時半。いくら月曜とはいえ年度末。予約の溢れた店もあれば大通りは人でごった返してる。
それらが嘘のようにこの通りは閑散として、通るのはご近所に住む、これもまたくたびれた兄ちゃんくらいか。
もう少し足を伸ばせば盛り場のお兄ちゃんたちがあーでもないこーでもないと騒いでるんだろうけども、見事な別世界。
そこにある、味彩吉野。
麻婆豆腐を求めてやってきた。

なんせネットでは小料理屋だなんだと書いてあって、どれもふたこと目には似つかわしくない麻婆定食についてつらつらと書かれてある。
食べログの点数も唸るほどの高さではないし、その時いた場所からだと少し距離はある。
だけど写真を見る限り私の大好きなタイプの麻婆豆腐がそこにはあるようだった。
血のような少し黒みがかった赤。ドロドロとしている様子がすぐにわかる照り。無理やりはたいた白粉のように粉々しく撒かれた花椒。
こりゃあ行くしかないと鼻息を荒くして向かった。

さて入店、誰もいない店内。小さな小上がりとくの字のカウンター。これは狭い。
12インチのブラウン管テレビでは謎の歌番組。聞こえてくるのは演歌ばかり。極めつけには坊主姿の店主がいるときた。まるで井手らっきょな彼が、澄声でらっしゃいとお出迎えをしてくれた。
これは期待できるとワクワクしながら麻婆定食を注文。店主も、年頃の女がきかざりもせず一人ぼっちで来たもんだから、晩飯食らって帰るんだなとすぐにわかったようだ。

まずはチューハイグラスに注がれた大量のお水が登場。手際良く準備を始める店主。
店内はとても清潔。油臭さもない。カウンターひと席一席に置かれたお盆が小料理屋のそれを彷彿とさせる。
次に水菜とレタスのサラダが登場。シーザードレッシングがたっぷりとかかっていて美味しい。
食べ終わる前に小さなカップに入れられたスープ。真っ白なそれにパラパラとか買った黒胡椒の香りが鼻につんざく。
ポテトスープだろうが、やけにざらざらとした舌触り。味は薄い。もしかして麻婆豆腐に合わせてこういった味付けにしているのだろうか。

そして満を持して横綱が登場だ。
見よ!私の大好きな麻婆豆腐の登場でござる!


いわゆるカレーライス形式の麻婆豆腐です。

記事にした時点ですでにお気づきかとは思うが、本当に美味しかった!
じわじわと舌をシビれさせてくる麻辣味。しっかりとお肉の味がする。ざく切りのネギは歯ざわりもいいし、豆腐は名店に多いと言われる(?)1.5センチ角!
はじめのうちは、調子に乗って、”ほら、来いよ…!”とか言ってた私。
後になってくるにつれ辛さが口腔内でうごめきだす。
これは旨い!マジでうまい!ここ最近だめ麻婆豆腐ばかり食べていたせいか、染みわたる旨さ…!!

ただ…!




ただ…!!!!






白飯がチンだった…。










これはもう仕方がないのさ。
昼ニーズはきっと高い。近隣の多くのビジネスマンがこぞって訪れているに違いない。
けだし夜。この細い小路は人が少なく、御飯なんて炊いて待ってた日には目も当てられない結果になるのだろう。
それにしてもこの絶品麻婆豆腐にして白飯が無念すぎる…!旨さの差が半端無い!逆にチンのあと丁寧にほぐして出してくれたその一連の流れを見ていただけに、食べている途中実はこの白飯旨いんじゃないかとか錯覚してきたけど、やっぱりどこまで言ってもチンだ。
多分この日月曜だったのも理由の一つなのだろう。


だから!!!
だからこそ、私にお金を落とさせてほしい。
私は必ずもう一度行くと思う。その時にチンでなくあってほしい!だってそれだけ、本当においしかったんだもの!!!

いいですか、味彩吉野。“ご飯がそれじゃあだめだよ〜”なんてつれなくしないでみんな!!本当に美味しかったんだから、是非次回にチャンスを!!
今度は金曜日に伺ってみようかな!
そうすっと普通の飲み屋さんのお客さんで溢れてて麻婆豆腐を頼む空気じゃなかったりしてね!なんてツンデレ!


新宿三丁目|味彩吉野
03-3354-7099